お部屋探しされるときは、立地・間取り・家賃など多くの条件が比較検討されます。
毎月の家賃はともかく、賃貸物件の月額費用として「管理費」「共益費」という名目で毎月家賃と一緒に請求される項目があります
この管理費や共益費は何に使われているのか?また、その違いはどんなものなのかを解説します。

賃貸を借りる時の管理費と共益費って何が違うの?

管理費と共益費の定義についてみていきます。

管理費

建物の管理に関わる金額で、税金や事務処理費用や管理人の雇用費用などに充てられる金額を指します。

共益費

住居部分以外、共有部分での保守費用に充てられます。廊下の電気代や清掃員への支払いにも使われる費用になります。

出典:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則(http://www.rftc.jp/kiyak/hyouji_sekou.html (第5章(41)(42))

実際は明確に区分されていない

この管理費と共益費についてですが、毎月の家賃ともに請求される場合があります。または管理費のみ、あるいは共益費のみ、さらには両方請求される物件もありその明記方法は物件ごとに異なります

しかし、使用使途は似たようなもので、簡単に言えば建物の維持費や管理費です。
あまり明確に区分化されていないこの管理費と共益費の使い道についてご説明します。

管理費の用途

管理費は建物の維持管理のための費用で、管理人費用や事務費・税金の支払いの費用に充てられます。

管理人の人件費

マンションなど管理人さんが常駐されている場合は、その人件費として管理費から支払われます。

家主の固定資産税、都市計画税のため

家主は賃貸物件の「固定資産税」・「都市計画税」を支払います。家賃自体からの支払いという物件も多いですが、アパート等の場合には管理費という名目で固定資産税・都市計画税の支払いに充てている場合もあります

共益費の用途

共益費は専有部以外の共有部分の保守・維持費に利用されることがほとんどです。内容を細かく見ていきましょう。

共用部の電気代や水道代、電球等交換費

例として、エントランスホールの冷暖房や共有部分の廊下の電気代や電球交換費用があります。また清掃で使う水道代などの光熱費がこの共益費から支払われます。

共用部の定期清掃費

建物内部や外回りの清掃は管理人が兼務されている物件もあれば、分業して専門の清掃員を雇う場合もあります。
この清掃にかかる雇用費用や清掃用具購入などもこの共益費から支払います。

その他共用部で発生する修繕費

・共同アンテナが台風で壊れた
・マンションの配電盤が老朽化して取り替え費用が発生した。
・マンションのインターネット導入の工事費用
・エントランス部分の植栽の手入れ
・オートロック修繕費
・マンションに立体駐車場などが併設されている場合はその維持費用
・防犯カメラ設置費用とその毎月の定期費用
・セキュリティ会社契約の費用
・外壁の補修・階段部分の老朽化の修繕費用

など細かい部分も含めて、すべて費用として共益費から出すこともあります。

エレベーターの電気代、定期点検代

このエレベーターの電気代や定期点検代や補修費もこの共益費から支払われます。

使い道は明確には決まっていない

この共益費は建物に必要な費用を支払うという部分でいろんな支出に使われます。
例えば豪雪地帯では、冬期間の消雪パイプの費用として一世帯2,000円前後毎月で徴収されている場所もあります。

賃貸物件ではこのような費用も共益費から支払います。その他地域町内会への支出、ゴミステーションの設置費用なども同様です。

出典:政策検討会議資料(長岡市 水道・下水道・消雪パイプの制度統一について )

なんで家賃と管理費(共益費)が分かれているの?

この管理費と共益費が建物の保守・管理全般に利用される費用であることはおわかりいただけたと思います。
でも、毎月必要な費用で支払うのであれば何故家賃に含めないのでしょうか?その理由をご説明していきます。

家賃が安く見える

不動産会社で多くの賃貸物件の募集を見るとき家賃はほとんど55,000円や80,000円などで家賃だけが提示されています。

そして、募集広告をよく見るとその他費用としてこの管理費と共益費が発生すると記載されています。
結局は毎月家賃と一緒に支払うのですが、別扱いで提示されています。お部屋を探している人からみれば少しでも条件がよく安いところをと探されていると思います。

共益費や管理費用など細かい費用を入れるとぱっと見た印象で高く感じませんか?
少しでも家賃を安く目立たせる為に、募集提示条件は家賃のみという物件が多いのはこのような理由がある為です。賃貸物件の募集を見るときは家賃だけでなく、管理費と共益費の金額もチェックするべきです

共益費や管理費を別にすると入居費用が安くなる

敷金・礼金・仲介手数料が、それぞれ家賃の1カ月分という場合、管理費と共益費込みの金額だと入居者の支払金額が高くなってしまいます。ただし、入居者時の初期費用の中にこの管理費と共益費が前家賃と共に請求される物件があります。この場合、家賃は日割りになっても管理費と共益費は日割りにならない場合が大半です。

これは家賃と比べて、管理費と共益費が少額であることと入居するにあたり共有部分の維持や管理事務が発生するためです。
初期費用の中に含まれるので事前に費用の見積もりをもらい、確認しましょう。

管理費や共益費は家賃の5~10%が目安

管理費と共益費はどの程度になるのでしょうか?
だいたい、家賃の5%~10%位というのが目安です。
家賃が高くなるのに比例して管理費と共益費も高くなる傾向にあります。

また、分譲マンションでは修繕積立金があり、基本は家主が家賃等の受取金から支払いますが、一部ではこれら管理費と共益費以外に家賃と一緒に
費用を支払う場合もあります

何年か経過すると建築物は必ず修繕が必要になってきますので、分譲でも賃貸でも保守費用や・修繕費用を入居者に負担をして貰うためです。

管理費は同じマンションでも一律ではない

同じマンションに入居されていても、なぜか他の部屋より管理費用が高い場合があります。実は管理費用は全部屋一律でない場合がほとんどなのです。その理由について次にご説明します。

管理費は床面積に応じて決まる

管理費が違う場合、もっとも大きな要因は部屋の大きさによるものです。専有部の面積が広いほど、当然ながらその分支払う管理費用も高くなります。ワンルームマンションと4LDKのマンションが同じマンション内にある場合、家賃が異なるのと同様の仕組みで管理費用も異なります。

管理費は入居時期に応じて決まる

建物が建った当初は低く、年数が経った場合は修繕費用などがかさむことが予想され管理費用が高くなる場合があります。

管理費は家主や管理組合の判断で決まっている

小規模のアパートなどでは、建物の年数が経ち徐々に修繕が必要になったり、場所により税金が高くなったりと負担が多くなり、家主や管理組合の判断で金額が決まります。

管理費と管理の品質は比例しているわけではない

例えば毎月の清掃が月2回だったとして、管理費と共益費が上がっても大抵は回数を増やすということはありません。

管理費や共益費の値下げ交渉は可能か

管理費と共益費の値下げ交渉は可能です。
物件によっては、家賃80,000円(管理費・共益費込み)となっている物件もあります。
借りる側から見れば「全部込みでこの金額」となり、大変わかりやすい表示です。

このやり方は、家主が家賃は下げたくないがその分管理費と共益費を込み
にするという方法で実質値下げをしている物件でもあります。

同じ条件で家賃も同レベルであっても、管理費と共益費が別にかかるのならば毎月数千円差となります。このような場合は、
類似物件比較検討し、その募集広告を提示して交渉するのも一考です。

最後に

管理費と共益費は家賃と同時に支払います。
そのため、毎月必要な費用も家賃と合算して考えるべきでしょう。
家賃以外の毎月必要な費用として管理費と共益費について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

入居者からすれば、少しでも安く、そして良質な物件に入居したいものですよね。
しかし、家主の立場から言えば高額の税金や次々発生する修繕費用などを一手に
負担するのは大変です。

そこで、家賃とは別に管理費と共益費を請求する物件が多くなっています。建物の維持管理費用は入居者全員で負担する金額です。メンテナンスが行き届いた物件に住みたいのであれば、多少の負担があることを知っておくことが有益です。

賃貸物件の入居を検討するのであれば、家賃だけで判断してはいけません。
毎月の費用としては

・家賃
・管理費と共益費
・駐車場代
・保証会社への保証料
・家賃振込費用(口座振り込みの場合)
・上記の金額に消費税も加算される場合もあります。

これら全てが毎月支払う費用です。

賃貸物件では、このあたりの表記がよくみないと分からない場合もあります。
部屋の大きさにより管理費と共益費が違う場合の表記は「管理費と共益費は5,000円~25,000円」
となり部屋ごとに差が出ます。

自分の住みたいお部屋の総費用を事前に確認してください。
同じ条件の物件でも、これら細かい費用まで比較検討すると希望条件にあった
物件が見つかることでしょう。

監修:大長 伸吉(不動産投資アドバイザー)