誰でも100万円ぐらい貯お金が貯まるとそろそろ資産運用について考えはじめる頃ではないでしょうか。しかし、世の中には多種多様な運用商品があり、どの運用商品を購入すればいいのか迷ってしまうことも多いですね。ここでは100万円で購入できる投資商品をローリスクローリターン、ミドルリスクミドルリターン、ハイリスクハイリターンの3つに分類してご紹介していきます。
1.ローリスクローリターンで選ぶのであれば
まずローリスクローリターンの運用商品を見ていきましょう。
元本保証のある定期預金
定期預金とは預入期間(満期)を定めた預金です。満期まで預ければ普通預金よりも金利が少し高めに設定されています。預入期間は1ヶ月から1年、最長で10年まで様々なものがあります。期間が長ければ長いほど金利が高く設定される傾向にあります。ただし、満期前に中途解約すると適用金利が低くなってしまいます。
定期預金の最大の魅力は、元本保証があることです。もちろん銀行が元本保証をしているのですが、仮に銀行が倒産したとしても預金保険制度という公的制度によって1人1,000万円までの元本と利子が保証されています。
定期預金に預けるときの注意点ですが、一口に定期預金といっても金融機関によって金利が違います。当然より高い金利ところに預けた方有利ですので、定期預金を選ぶ際は情報収集をして比較検討してみましょう。
個人向け国債を購入する
個人向け国債は、国が発行する債券である国債を個人向けに販売したものです。固定金利で発行される「固定3年」と「固定5年」、変動金利で発行される「変動10年」の3種類があります。国債の満期まで半年間ごとに利子を貰うことができます。また、個人向け国債も国により元本保証がされています。
個人向け国債の注意点は満期前に換金するとペナルティがあることです。換金する直近2回分の利子相当額が調整され換金額から差し引かれます。一般的に個人向け国債も期間が長いもののほうが金利が高くなりますが、満期前の換金のペナルティがあることを考えた上で償還期間も考慮することが重要です。
利回りは高くても1%未満
定期預金と個人向け国債をご紹介しました。どちらも元本保証がある最も安全な運用商品です。しかし、ローリスクローリターンですから、安全な運用商品は低いリターンしか生みません。
ここで定期預金の金利と個人向け国債の金利を見てみましょう。預入期間5年の定期預金の金利は0.01%~0.2%程度となっています(2018年3月発行分)。一方、個人向け国債の「固定3年」、「固定5年」、「変動10年」はともに0.05%となっています(2018年3月時点)。どちらの金利を見てもかなり低い値であることが分かると思います。
出典:財務省 個人向け国債(http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/)
元本保証の運用商品では高いリターンを期待してはいけない
ここではローリスクローリターンの運用商品ということで元本保証がある運用商品に限定してご紹介しました。しかし、元本保証があるということは結局低いリターンしか得ることができません。より高いリターンを得たい人は元本保証に拘らず(ある程度のリスクをとって)投資をする必要があります。
2.リスクを取れる人はミドルリスクミドルリターンを選ぶ
定期預金や個人向け国債の低いリターンでは物足りず、よりリスクをとっても良いと思っている人にミドルリスクミドルリターンの投資商品をご紹介します。
10万円からでも株式投資はできる
・10万円からの株式投資
株式投資は10万円(または10万円未満)からはじめることができます。ただ株式の全て銘柄を10万円で買えるのではありません。では10万円で買える株式を探すにはどうすればいいでしょうか。それは株式の1銘柄あたり買付金額を理解することです。
1銘柄あたり買付金額は以下のようになります。
1銘柄あたり買付金額 = 株価 × 最低売買単位
たとえば株価が1,000円だとしても最低売買単位が1,000株ならば1銘柄あたり買付金額は100万円になります(この他に証券会社の手数料が別途に掛かります)。10万円の資金ではこの銘柄を買うことができませんので、1銘柄あたり最低買付金額が10万円以下の銘柄を探しましょう。
・株式投資のリターンとリスク
株式投資のリターンは値上がり益と配当に分けることができます。値上がり益は株価が買ったときよりも高くなったところで売ることによる利益です。配当は会社の利益から株主に払われるものです。
株式投資のリスクは、まず株価下落のリスクです。また配当は約束されたものではなくて会社の業績に左右されるもので、配当の減少リスクがあります。その他に、会社が倒産するリスク(信用リスク)や株式をすぐに売買できないリスク(流動性リスク)があります。
ただし株式の銘柄は様々にあり、それぞれにリターンとリスクが違います。株式投資をするときは、株価の過去の動きや四季報などを参考にしながら投資するようにしましょう。
投資信託は月々数千円からできる
・投信積立
投資信託は購入する金融機関によって最低購入金額が異なります。証券会社や銀行などの店頭で購入する場合には1万円程度が多いですが、ネット証券の中には1,000円程度から購入できるところもあります。また、「投信積立」という方法を使えば、月々数百円とか数千円からはじめることができるところもあります。投信積立とは毎月決まった日に、決まった金額で投資信託の買付を行うサービスです。投信積立で設定できる金額は少額からでも可能ですから、投資初心者でも始めやすい投資方法です。
・投資信託のリターンとリスク
投信信託のリターンは値上がり益と分配金に分けることができます。値上がり益は投資信託の値上がりから発生するリターンです。分配金とは投資信託の運用の結果に応じて支払われるリターンです。投資信託のリスクは、投資信託の基準価額下落リスク、投資信託の分配金が支払われないリスクなどがあります。
リートの分配金は安定性が高い
・リートとは
リート(REIT:Real Estate Investment Trust)とは不動産投資信託のことです。投資信託というと株式や債券などで運用する投資信託が一般的ですが、リートはその名前の通り投資対象を不動産としています。では不動産を投資対象とする投資信託にはどういったメリットがあるのでしょうか。
まず投資信託にすることで不動産に間接的に少額から投資することができます。不動産投資は多額の資金が必要になる一方で、リートは10万円程度から始めることができます。そして、リートは分配金が相対的に安定性していることがメリットに挙げられます。もともと不動産投資は安定した賃借料収入が期待できますが、リートは当期利益の90%超を投資家に分配することを条件に税金が免除されているため(税制面で優遇されているため)分配金が高い傾向にあります。
出典:SBI証券「リートはなぜ配当(分配金)利回りが高めなの?」(https://www.sbisec.co.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?OutSide=on&getFlg=on&burl=search_domestic&cat1=domestic&cat2=none&dir=info&file=domestic_reitstudy_130118.html)
・リートのリターンとリスク
リートのリターンは、他の投資信託と同様に、運用結果からの分配金と値上がり益です。もちろんリートも株式や他の投資信託同様に価格が日々変動しますので注意しましょう。
リートのリスクも、他の投資信託と同じで、分配金が支払われないリスクや値下がりリスク、またリート会社の倒産リスクです。また不動産に特有のものとして災害などのリスクがあります。
最近人気のソーシャルレンディングは1万円から投資可能
・ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとはインターネット上で資金の貸し手(投資家)と借り手(企業)を結びつける融資仲介サービスです。貸付案件が高利回りであることや1万円の小額投資が可能であることから最近人気となっています。
その仕組みですが、資金の貸し手(投資家)はソーシャルレンディング事業者のインターネットサイトで好みの貸付案件を探します。好みの貸付案件があれば、事業者に資金を投資します。事業者はその資金を使って借り手(企業)に貸付を行い、後で貸付金利と貸付金の返済を受けます。その後、事業者は投資家に対して投資額の返済と配当・分配金の支払いを行うというわけです。
・ソーシャルレンディングのリターンとリスク
ソーシャルレンディングのリターンは、企業への貸付金利から事業者の仲介手数料を差し引いた配当・分配金です。
配当・分配金 = 貸付金利 - 仲介手数料
貸付案件は5~10%を中心に高利回りの案件が多く、高いリターンが期待できます。ソーシャルレンディングのリスクは、元本保証がないこと、原則中途解約できないこと、貸金業法によって具体的な投資先が分からないことなどです。
キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを狙うのか
投資にはキャピタルゲインとインカムゲインという2種類の利益があります。キャピタルゲインとは投資対象を購入価格よりも高い価格で売却することによる利益です。一方で、インカムゲインとは投資対象の業績から定期的に支払われる利益です。
投資対象のキャピタルゲインとインカムゲインのどちらを狙うかという視点でも投資対象を考える必要があります。
3.初心者は危険!ハイリスクハイリターンな投資手法】
ここでは大きなリスクをとってでもさらに利益を狙いたいという方に、ハイリスクハイリターンの投資商品を簡単にご紹介したいと思います。
FXは10万円程度で始められて、大きく稼ぐことも可能
まずCMなどでお馴染みのFXです。FXはForeign Exchangeの略で外国為替取引のことです。外国為替とは様々な国の通貨のことで、たとえば日本は円、米国は米ドル、ユーロ圏はユーロのことです。
FXでは通貨間の交換比率を取引します。たとえば1ドル=100円というレート(交換比率)だったとします。このとき投資家は100円を払って1ドルを購入します。数日後、交換比率が1ドル=120円になったと仮定します。このとき投資家は手持ちの1ドルを売って、120円を手に入れます。投資家は一連の取引の結果20円の儲けとなります。ちなみに詳しい説明は割愛しますが、手持ちが日本円だとしてもドルの売りから入ることもできます。
FXの最小取引単位の金額は一般的に100万円です(ただし、最近では最小取引単位が10万円のFXもあります)。しかし、FXはレバレッジ(借入)を使うことで100万円以下の資金からも始めることができます。たとえば10万円しか資金がないとしても、レバレッジ10倍(手持ち資金が10倍になるように借り入れること)を利用することでFXの取引ができます。
FXはレバレッジを活用することで小額から始めることができます。しかし、レバレッジを利用すると自分の手持ち資金以上のリスクを負っていることも自覚しなければいけません。すなわちレバレッジ10倍を利用するということは10倍のリターンを狙える一方で、10倍のリスクを負っているということです。そのことをしっかり理解してレバレッジを活用しましょう。
先物取引とは?
先物取引とは、将来の予め定められた期日に特定の商品(原資産)を現時点で取り決めた価格で売買する事を約束する取引です。・・・とこれだけでは難しいのですが、実際は原資産(株や債券など)の価格に連動する投資商品があり、その投資商品の価格の上がり下がりを予想する取引になります。
たとえば日経平均先物という投資商品があります。日経平均先物とは日経平均株価を原資産とする先物です。日経平均株価とは株式市場に上場している企業の中から日本を代表する225社を選び、その株価を単純平均した指数です。この日経平均株価という指数に連動する投資商品が日経平均先物です。将来、日経平均が上がると予測すれば「買い」、下がると予測すれば「売り」、予測が当たれば利益が出ます。
先物取引に特有の注意点として、①取引期間(決済期限)が決まっていること、②FXのようにレバレッジを利用することができることが挙げられます。
4.不動産投資も100万円からできる?
ここでは100万円からできる不動産投資をご紹介します。
融資を受ければ自己資金100万円でも不動産投資を始められる
不動産投資と聞くと何千万円も持っているお金持ちが行う投資方法というイメージがあります。しかし、不動産投資は投資の中で唯一、銀行から融資を受けることができる投資方法なのです。この銀行からの融資(不動産投資ローン)を利用すれば、自己資金が100万円でも不動産投資ができます。
銀行からの融資を受けることは、借金をすることですから不安になる方もいると思います。しかし、不動産投資ローンの場合、不動産投資によって家賃収入が入ってきますので、その家賃収入を不動産投資ローンの返済に充てることができます。そして、ローン完済後は、家賃収入がそのまま入ってくることになります。
自己資金100万円で買える物件とは?
自己資金100万円で買える物件はどのようなものがあるでしょうか。銀行の審査基準や借入人の属性にもよりますが、例えばオリックス銀行では1000万円~2億円の借入金の範囲で不動産投資ローンが利用できます。ある程度の年収や勤続年数等の条件があれば、都内の中古のワンルームマンション(2,000万前後)が自己資金なしで不動産投資ローンで購入することも可能です。
出展:オリックス銀行(www.orixbank.co.jp/personal/property/)
融資を受けられる人とは
不動産投資のために銀行から融資を受けるには、融資審査を通らなければいけません。融資審査で重視されるのは「個人の信用」と「物件の力」です。「個人の信用」には、借入の有無、年収、勤務先、勤続年数などがあります。「物件の力」は、融資を受ける物件の収益力(物件評価)のことです。こうして「信用力」があると認められると、銀行から融資を受けることができます。
安定した家賃収入
不動産投資は先に説明したリスクリターンの中では一般的にミドルリスクミドルリターンに分類されます。それは安定したインカムゲイン(家賃収入)が期待できるからです。
5.最後に
ここまで100万円で購入できる投資商品をリスクとリターンの段階に分けてご紹介させて頂きました。様々な投資商品がありますが、資産運用で大切なことは「自分はどれだけのリスクをとり、どれだけのリターンを求めるか」ということです。ぜひご自分にあった投資対象が見つけていただければ幸いです。
監修:杉浦 恵祐(CFP)